先日、Xで「年間休日88日の求人は存在していいのか」という話題が盛り上がっていました。就職活動中に休日数の少なさを見て応募をやめたという体験談や、行政が企業に甘すぎるという批判の声がある一方で、「週5日8時間労働という基準自体が長すぎるだけで、会社が違法なわけではない」という指摘も出ていました。

実はこの話、休日の日数だけを見ていると本質を見誤ります。今日は社会保険労務士の立場から、法律上のルールと、求人票をどのように見ればよいのかをお伝えします。

法律が定めているのは「休日」と「労働時間」

労働基準法には、実は「年間休日は何日以上にしなさい」という直接の規定はありません。法律が定めているのは次の二つです。

一つは法定休日です。使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません(週1日制)。あるいは、4週間を通じて4日以上の休日を与える方法(変形休日制)でも構いません。これだけを見ると、年間の休日は52日程度でも違法ではないことになります。

もう一つは法定労働時間です。原則として、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはいけません。多くの会社が「完全週休2日制」を採用しているのは、この40時間の上限を守るためです。1日8時間労働で週5日働けば、ちょうど40時間になるからです。つまり週休2日は、休日そのものが目的というより、労働時間の上限を守った結果として自然に生まれる形なのです。

1日の労働時間を8時間ぴったりに保ちながら週40時間以内に収めようとすると、年間休日はおおむね105日前後が目安になります。祝日の扱いや年末年始・夏季休暇の設定によって多少前後しますが、105日という数字はよく「完全週休2日制+祝日休み」のラインとして語られます。

では「年間休日88日」はどうなのか

一方、Xの投稿にもあったとおり、法定休日だけを守るなら年間52~53日程度でも法律違反にはなりません。ただしその場合、1日8時間労働のままでは週40時間の上限を超えてしまうため、必然的に1日の所定労働時間を短くする必要があります。つまり「休日が少ない」求人票を法律の範囲内で成立させようとすると、その分1日あたりの労働時間を短くしなければ帳尻が合わないのです。

年間休日88日という日数だけでは、「合法か違法か」は判断できません。1日の所定労働時間が何時間に設定されているかとセットで見て、初めて意味が分かる数字なのです。

たとえば、年間休日88日の場合、年間の労働日数は277日です。1日の所定労働時間を7時間30分とすると、277日×7.5時間で、年間の所定労働時間は2,077.5時間になります。一方、週40時間の上限を単純に年換算すると、365日÷7日≒52.14週なので、52.14週×40時間≒2,085.7時間です。2,077.5時間はこの2,085.7時間を下回るため、年間トータルで平均すれば週40時間の枠に収まる計算にはなります。

実は、このような平均を出す方法では合法かどうかはわかりません。労働基準法32条が定める「週40時間」は、原則として年間の平均値ではなく、各週ごとに守らなければならない上限です。したがって、どの週を切り取っても40時間以内に収まっているのであれば、原則どおり合法です。また、週40時間を超えるときがある場合、変形労働時間制を使えば合法になる場合もあります。

つまり「年間休日88日」という数字だけでは、週ごとの実態や制度の有無まで分からない以上、合法かどうかを断定することはできません。

求人票を見るときは、休日数の欄だけでなく、必ず「所定労働時間」「休憩時間」「残業の有無」、そして変形労働時間制が採用されているかどうかの欄もあわせて確認する必要があります。

顧問先の求人票を作るときに気にしていること

私は社会保険労務士として、顧問先の求人票作成に関わることがあります。そのとき、労働基準法上は問題がなくても、休日数があまりに少ない求人票は現実として応募が集まりにくいという実感があります。今の求職者は、休日数を採用条件の重要な比較材料として見ています。労基法をクリアしていることと、実際に人が集まることは、まったく別の話なのです。

そのため、休日数が少なくなりそうな場合は、単に「合法だから」で押し切るのではなく、休日を増やす方法がないか、あるいは休日以外の条件で埋め合わせができないかを、顧問先と一緒に検討するようにしています。

休日を増やす別の選択肢「変形労働時間制」

休日を増やしたいけれど、業務量的に総労働時間は減らせない、という会社もあります。

そうした場合に使われるのが変形労働時間制です。これは、一定期間(1か月単位や1年単位など)を平均して週40時間以内に収まっていれば、日によって、あるいは週によって労働時間にばらつきを持たせてよいという制度です。

これを使えば、たとえば週休3日にする代わりに、出勤日の1日の労働時間を長めに設定する、という働き方も可能になります。単純化した例で言えば、1週間を4日勤務・3日休みとし、1日の所定労働時間を10時間に設定すれば、4日×10時間で週40時間の枠にきちんと収まります。休日は普通の週休2日より1日多くなりますが、出勤した日の拘束時間はその分長くなる、というトレードオフです。これも法律上は問題のない設計ですが、当然ながら「休日は多いが、働く日はかなりハード」という求人になります。

体力に自信があり、まとまった休みを重視したい人にとっては魅力的な制度ですが、家庭の事情などで毎日決まった時間に帰りたい人にとっては、かえって使いにくい働き方になることもあります。制度自体の良し悪しというより、自分の生活スタイルに合うかどうかで評価が分かれる仕組みだといえます。

休日数と労働時間は必ずセットで見る

ここまで見てきたように、休日の日数は、1日の労働時間と切り離しては意味を持ちません。同じ「休日88日」でも、1日7時間労働の会社と1日9時間労働(変形労働時間制)の会社では、実質的な負担はまったく違います。

求人票やXの話題では、休日数という分かりやすい一つの数字だけが独り歩きしがちです。もちろん休日数を気にすること自体は、働き方を考えるうえで大事な視点です。ただそれと同時に、1日の所定労働時間、残業の実態、休憩時間の取り方まで含めて確認しないと、本当の労働条件は見えてきません。

大切なのは、休日数の多い少ないを他と比べることよりも、自分自身がどういう働き方をしたいのかをはっきりさせることです。休日をとにかく多く確保したいのか、それとも休日は少なくても1日の労働時間を短くしたいのか、あるいは変形労働時間制のように休日と労働時間の組み合わせで調整したいのか。自分の優先順位が定まっていれば、求人票の数字に振り回されず、条件を的確に見極められるようになります。

求人票を見るときのチェックポイント

最後に、求人票を見るときに休日数とあわせて確認しておきたい項目を整理しておきます。

一つ目は、1日の所定労働時間と休憩時間です。休日数が同じでも、1日の実働時間が違えば、1年間トータルの拘束時間はかなり変わってきます。

二つ目は、残業の有無と平均残業時間です。所定労働時間が短くても、実際の残業が常態化していれば、休日数が多いことのメリットは薄れてしまいます。

三つ目は、変形労働時間制やフレックスタイム制などが使われていないかです。使われている場合は、1日単位ではなく、月単位・年単位でどれくらい働くことになるのかを確認しましょう。

四つ目は、有給休暇の取得実績です。年間休日の数字には有給休暇は含まれていないのが一般的なので、実際に休みを増やせるかどうかは、有給が取りやすい職場かどうかにも左右されます。

これらを一つずつ照らし合わせることで、「休日88日」という数字が自分にとって許容できる条件なのか、避けるべき条件なのかが、かなりはっきり見えてくるはずです。

どのような働き方を望むのか

「年間休日〇日」という数字は、あくまで働き方を判断するための入口の一つにすぎません。その先にある労働時間の中身まで確認する習慣を、ぜひ持っていただければと思います。

休日数の多い会社が必ずしも自分に合っているとは限りませんし、休日数が少ない会社がすべてブラックというわけでもありません。

大事なのは、法律という最低ラインを知ったうえで、自分がどんな働き方を望んでいるのかを、自分自身の言葉ではっきりさせておくことなのです。