今後講師をやりたいという方向けのセミナーでお話する機会がときどきあります。
コンテンツの作成方法について、いろいろ細かい注意点をお伝えするのですが、基本のキのポイントは、「これは当然わかってるよね」ということで、いままであまりきちんとお伝えしていなかったことに気が付きました。
おそらくビジネス系のセミナーや研修をやろうという方は、ぼんやりとでも意識されていることかと思いますが、ここをはっきり意識することで、さらにコンテンツの精度があがってきます。
その基本ポイント3点をご紹介しましょう。
ゴール
セミナーや研修を実施する際は、ふつう「目的」を決めます。
「ハラスメント防止研修」であれば、通常「ハラスメントのない職場をつくる」という大きな目的があります。
しかし、これだけで研修を作ってしまうと、知っていることを並べました、という感じになってしまいます。
目的だけでなく、「ゴール」を具体的に設定しましょう。
「ゴール」というのは、「セミナー・研修が終了したとき、受講者の方たちがどういう状態になっているか」という意味で使っています。
たとえば、筆者がよく設定しているゴールは次のようなものです。
- ハラスメントについて、基本的な知識を身につける
- 部下とよい関係をつくるため、自分のコミュニケーションを見直し、行動目標をひとつ作って取り組む
- 同僚のよいところを知り、職場改善のために自分でできることを考えて取り組む
目的との違いがおわかりになるでしょうか。
このように「ゴール」を決めると、なにをお伝えすればよいのか、グループワークではなにをやってもらうのか、自然に決まってきます。
社内研修の講師をする場合は、通常、受講者側の「ゴール」のみを考えればよいですが、オープンセミナーの場合は、もうひとつ、主催者側・講師側の「ゴール」を設定する必要があります。
とくに現在は、オンラインで無料や低価格でのセミナーがたくさん行われていますが、セミナーの受講料だけではペイしないのは明らかですよね。
受講者のために有益な情報を提供する、という社会貢献でやっているところもあるかもしれませんが、通常は別の「ゴール」があります。
「自社の別のサービスを知ってもらう」という宣伝目的が多いかもしれません。
マーケティングでは、無料や低価格のセミナーを「フロントエンド」とし、別のもっと高額なセミナーや商品を「バックエンド」として、そこに誘導するというのがふつうです。
筆者は、今後講師としてやっていきたい方には、「講師としての実績をつくる」という「ゴール」のために、オープンセミナーを自主開催することをお勧めしています。
この場合は、「場数を踏み、講師としての実力をつける」という「ゴール」もありますね。
そこをはっきりさせると、コンテンツの内容だけでなく、セミナーの最初や最後に、受講者にどのような呼びかけをすればよいかも決まってきます。
受講者にとっての「ゴール」は意識しているのに、講師にとっての「ゴール」があいまいで、たんに「無料でいいことを教えてくれるいい人」になってしまっているのを、ときどき見聞きします。
ビジネスとしてオープンセミナーを行う以上、そういう残念なことにならないようにしましょう。
ストーリー
ここでいう「ストーリー」とは、小説のような物語の筋ということではなく、理解しやすい話の流れ、ということです。
「ストーリー」を考えることで、コンテンツの組み立てが決まってきます。
問題解決タイプの研修やセミナーで、よくあるのは、次のようなものです。
- 現状の問題点、前提条件(よく統計情報が出てきます)
- 問題が起こってしまう理由、問題が解消しない理由
- 問題を克服するための対策
- いくつかの対策の中の一点にフォーカスして、具体的に説明
- 受講者への提案
頭に入りやすい、自然な流れですよね。
これを基本として、あえて基本を崩したり、自明な部分は省略したりしますが、それは基本の流れがあるという前提での話です。
「ゴール」と「ストーリー」を意識することで、おおまかなコンテンツはできてしまうと言ってもいいくらいです。
タイムスケジュール
研修・セミナーには、決まった時間があります。
30分という短いものから、数日にわたって行うものまでさまざまですが、決められた時間の中でのバランスを考え、タイムスケジュールをつくることで、コンテンツが形になります。
講師の頭の中に10の知識や情報があるとしても、その中の1、もしくはそれ以下の分量しか、受講者に伝えることはできません。
伝えたいことがたくさんあって、時間が足りないという講師は多いかと思います。
筆者もそのひとりで、毎回タイムスケジュール作成には苦労しています。
でも、時間の制限がなければ、伝えたいコンテンツの優先順位をつけることもできません。
受講者が理解しやすいバランスを考えることで、まとまりのある研修・セミナーになります。
講師をやりたい方には、「原稿を書く」「リハーサルをする」ことをお勧めしていますが、これはどちらも、練習という意味だけでなく、時間配分を適切に行うために必要な過程だからです。
パワーポイントの資料を作成して「はー、できた」と安心してしまってはいけません。
パワポのスライド1枚あたり、だいたい何分という決め方もありますが、実際に話してみると、案外予想どおりになりません。
しゃべってみて、1枚のスライドがあまりに長くなるようであれば、スライド自体を分割したり、資料作成に戻って検討することも大切になってきます。
終了時間をしっかり決め、延長はなし、というのが原則です。
バックエンドがある場合には、その分の時間も入れて、タイムスケジュールをつくりましょう。
以上3点のポイント、「いまさらそんなことわかっている」とお考えの方も、3点を検証するという視点で、ご自分のコンテンツを見直してみると、受講者の方に「刺さる」研修やセミナーになりますよ。