やっと見ることができた『新しき世界』。
宇都宮で韓国映画といえば、もうここばっかりのヒカリ座だったのだが、客はわたしともうひとりだけ。あやうく貸し切りになるところだった。
最初にイ・ジョンジェの顔が写ったシーンで「この人、いくつになったんだろう」という疑問が。帰ってきてぐぐってみたら、1973年生まれなので、この映画を撮ったころは40になるかならないか。若いときから、あまり若々しいタイプではないし、中年に足を踏み入れた今も、なんとなく年齢不詳。そういうわけで、回想シーンもあまり無理がないのがよろしい。
韓国ノワールといえば、超痛そうな暴力シーンのオンパレードというのがお約束だが、この映画もその例にもれず、いきなり血みどろのシーンから入ったので、予想してはいてもぎょっとした。武器が銃ではなく、ナイフやバット、スコップなので、その後も実になまなましい。気が弱い人には向かない。
だが、この映画で印象に残るのは、暴力ではなくて、おじさんたちの顔、顔、顔である。
女優陣も悪くないのだが、きれいなだけにどうも影が薄い。ただ、一箇所、血まみれで縛り上げられ、半死半生で目だけ動かす表現は、うなりたくなるような迫力があった。
イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンと芸達者3人の豪華共演だが、ファン・ジョンミンは役柄自体がいちばん得だったかも。徹底的にアホっぽく、悩むシーンはあまり描かれない。それだけに、底になにかあるな、という印象を受ける。
チェ・ミンシクはいつもどおりチェ・ミンシクだし、イ・ジョンジェのスーツ姿はなかなか眼福だったが、思いがけずよかったのがパク・ソンウンである。いかにもヤクザっぽい粗暴で無神経な単純なキャラクターかと思いきや、逮捕されてからの表情がすばらしかった。
わかりやすい二枚目は出てこない映画であるが、やっぱり役者は顔よねぇ、という結論。