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「選択制で75歳程度まで」年金支給開始繰り下げ検討 NHKニュース

田村厚生労働大臣は、NHKの「日曜討論」で、高齢者の働き方が多様化していることを踏まえ、現在、個人の選択で公的年金の支給開始年齢を70歳まで繰り下げられる制度について、75歳程度まで広げられないか検討する考えを示しました。

このニュースについて、はてなブックマークというソーシャルブックマークに投稿された意見の一部が下記です。400以上のブックマークがされています。

nhkhatebu

70歳でもらえる年金が75歳までもらえないなんてひどい! という悲鳴だらけです。

とはいっても、これについては、年金受給年齢って65歳じゃなかったっけ? と思った方が正解です。

老齢基礎年金老齢厚生年金には「繰下げ」という制度があり、65歳の年金受給開始年齢を本人の選択によって遅らせることにより、年金額を増加させることができます。逆に、年金受給開始を繰上げて、早くもらえるけれども年金額が減ってしまう、という仕組みもあります。

記事の中にもそのことには簡単に触れられているのですが、多くの人は、中身を読まずにコメントをつけたのでしょう。

もっとも、このニュースのみだしは最初は別のものでした。「選択制」という言葉が入っていなかったのです。誤解を招くことに気づいたのでしょう、途中で現在のものに差し替えられました。

ですので、勘違いした人を責められない事情もあります。とはいっても、引用した最初の3行を読めば「選択制」とはっきり書いてあるんですけどね。

また、もちろん、このニュースは「繰下げ」についてのものだということを認識した上でコメントしている人もいます。

年金受給開始年齢や、繰上げ、繰下げについて、多くの人が知識がない、ということは、政府のPR不足です。

しかし、それ以前に、「年金はもうダメだ」という気分が蔓延していて、ほんとうにダメなのかどうか考えることもせず、それらしい記事を見たら、ちょっとひとこと言いたい、ということのようにも見えます。

いまの年寄りはいいけど、自分たちは年金なんてもらえないと思い込んでいる。年金アパシーとでもいうような状態です。

別にわたしは厚労省の回し者ではありませんが、現段階で公的年金より有利な老後の備えというのは見当たらないと思っています。

基礎年金の受給額のうち、半分は税金から出ています。さらに、厚生年金の保険料は半分が会社負担です。少なくとも、税金を払っている以上、基礎年金はもらわないと損です。

さらに、見落としがちなのが、現在の公的年金のおかげで、親を扶養する義務を免れている人が多い、ということです。

年金がなければ、年取って働けなくなった親の扶養義務があるのは、現役世代の子供です。現在の30代、40代の人で、老齢基礎年金程度の金額(満額で年778,500円)を親に仕送りしなければならないとしたら、かなり生活厳しい、という人も多いのではないでしょうか。

確かに年金の仕組みはわかりにくく、運用の問題など、「ひどい」と言いたくなるところももちろんありますが、少なくとも中身をもう少し知ってから批判してもいいように思います。日本年金機構のサイトを見れば、十分でしょう。

年金についてなら、文句を言っても、まわりにも「そうだそうだ」と言ってもらえる、という程度の、安全なはけ口にしているだけでは、逆に、自分の権利を守ることはできないでしょう。