『反社会学講座』で10年前に書きましたけど、メラビアンの法則なんてものはない、とメラビアン博士本人が認めてるんです。限定された状況での実験結果を日常のコミュニケーションに一般論としてあてはめるのはまちがいだといってるんです。
本人が否定してるのに、今日も日本中のどこかのセミナーで、コンサルタントやマナー講師がメラビアンの法則というエセ科学をさも真実であるかのように教えて、高い講師料を受け取っているのです。
なかなかこの話って広まらないみたいですね。わたし自身も、2年ほど前にこの話題について書いています。古いブログはいまネット上に出していないので、そのまま再録します。
初出は2012年3月22日です。
(ここから再録です)
プレゼン関係のセミナーに出たことがある人は、「メラビアンの法則」というのを、一度は聞いたことがあるのではないだろうか? 情報が伝達するときは、言葉の内容よりも、視覚から伝わるもののほうが多い、という「法則」だ。わたしも、何度も聞いたことがある。きょう、ふとこの「法則」を思い出したはいいが、細かい内容は忘れていたので、確認するためにぐぐってみた。
すると。。。
55%=Visual (視覚情報:見た目・表情・しぐさ・視線)
38%=Vocal (聴覚情報:声の質・速さ・大きさ・口調)
7%=Verbal (言語情報:言葉そのものの意味)
そうそう、こんな感じだったよねー、と、これが書かれていた天使と悪魔のビジネス用語辞典 というサイトを読み進めていくと、そういう話ではないという記述が。
問題のメラビアンが行った実験では、Verbal とは、いくつかの単語、Vocal とは、その単語に感情を込めて録音したもの、Visual とは、なんらかの感情を表した顔写真。この3つを、矛盾した内容で同時に見せた(聞かせた)とき、どれが表している意味がいちばん伝わったかを調べたものだという。
visual が大事、つまり、ボディーランゲージが大事です、なんて話は、この実験からは出てきそうにもない。だって、顔写真だもんね。
この実験から導き出される本来の仮説は、「人は、言葉の内容と表情や声音が矛盾しているとき、言葉の内容よりも、表情や声を真実だと受け取る」ということ。これならば、わたしも何度か聞いたことがあるし、納得できる内容である。しかし、そのときに「メラビアン」という名前は出てこなかったような。
わたしがいくつかのセミナーで聞いた話は、実験の内容からかけ離れた俗流解釈らしい。いやはや、まったく真に受けていたよ。人前でしゃべるときに「メラビアンの法則では~」とやらなかったのは、あんまりあちこちで聞くから、それをそのまま言ったんじゃつまらないでしょ、という程度の理由にすぎない。
上記サイトには、こんな記述も。
「メラビアンの法則」を得意になって語るセミナー講師がいます。
その人は、よそのセミナーで仕込んだネタを、そのまま繰り返しているのでしょう。
「メラビアンの法則」を取り上げた段階で、その講師がどの程度のレベルかが分かりますね。
うんざりした表情と声色で言ってやりましょう。
「先生、その数字ってどういう実験で出したか知ってますか?」」
きゃーっ!
しかも、日付を見ると2002年。10年前だ。
わたしが、この手のセミナーに出るようになってから、まだ5年もたっていないのだから、いままでわたしが聞いたセミナーの講師は、すべて、この内容について、検索することもせず、参加者に伝えていたことになる。
そのサイトがどうして信じられるのかって? 読めばわかるが、明らかに出典を踏まえた記述だ。
セミナーで「メラビアンの法則」と聞いた人が、家に帰って、もう少しくわしい内容を知りたいな、と思ってぐぐったら、「これをとりあげた時点でその講師のレベルがわかる」なんて書いてあるサイトにあたるわけだ。講師の信用ガタ落ちである。これはマジに怖ろしい。
TTP(徹底的にパクる。これもセミナーでよく聞く言葉)もいいんだけど、出典は必ず確認しよう、という当たり前のオチでした。