先日行った管理職対象の研修で、こんな質問が出ました。
「実際に相談を受ける場面で、メモを取りたいときは、どのようなタイミングでとったらよいですか?」
そのときやっていたテーマは、ハラスメントの被害者や行為者から、管理職としてどのように聞き取りをするか、ということでした。そのために、傾聴を主眼とした、ロールプレイングをやっていただきました。
いかに相手の話に集中し、相手にもしっかり聴いていることを行動で伝えるにはどうしたらよいか、ということを具体的に考える中から出てきた、とても鋭い質問ですよね。わたしも、ハッとしました。
わたしのやり方をお話すると、ハラスメント事案のヒヤリングをするときは、基本的にはメモを取らずに、相手の方の話に集中して聞いています。とはいっても、ヒヤリングですから、事実関係を聞き取ることも大切ですし、当然記録は必要です。
ですから、相手の方の了解をとって、録音をするようにしています。社内でヒヤリングする場合ですと、録音でもいいですし、ふたりで面接して、片方の人が記録係をするということでもいいと思います。ただ、複数で面接するときは、相談してきた人に圧迫感を与えないように配慮してください。
「記録のために録音していいですか? この音声は報告書作成のためにわたしが聞くほかは、決して外には出しません」とおたずねすると、たいていの方は「いいですよ」と言ってくださいますが、中には録音はいやだとおっしゃる方もいます。その場合は、メモを取りながらお話を聞くことになります。
聞きながら書くのは、慣れてくればそんなに難しいことではないのですが、やはりメモをとりながら聞くことは問題があります。視線がどうしても手元に向きがちになるので、相談者の方の表情の変化を見落としたり、なにより、こちらの表情やリアクションも伝えづらいので、ビジネスライクな印象になって、相談者に不安を与えてしまう可能性もあります。
そこでどうするかというと、「聞きながら書く」のではなく、聞くときは相談者の顔を見ながらしっかり聞きます。そして、話の切れ目で「いまのお話はこういうことでいいですか?」とまとめながら、メモを書き、相手に見せます。そのとき、なるべく自分の言葉でまとめずに、相談者の使った言葉をそのまま書くようにします。
そして、面接の最後には、自分の取ったメモを相手に見せて、了解を取ります。このとき「さっきはああ言ったけど、ほんとうはこういう表現じゃなくて、こういう言い方のほうがいい」と、直しがはいるときもあります。相談者の方からしても、自分の発言をいったんわたしというフィルターを通して、文字にして見せられると、冷静にふりかえることができるわけですね。
このやり方は、メモをとるほうも見落としたり、聞き落としたりという心配も少なく、相談者の方にも安心して話していただける方法ではないかと思っています。
だいじな相談を受けるときなどに、やってみてくださいね。
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