国籍とは、国が国籍法などで「こういう人がうちの国民!」と定義することで決められる。
これをもう少し敷衍すると、国籍を決めるのはその人の属する国家だけであって、それ以外の国は、ある人の国籍についてどうこう言うことはできない。
外国人登録証の国籍欄は、日本政府が外国人の国籍について分類する際の記号である。そこになんと書いてあろうと、外国人の国籍について日本国が決められない以上、その人の国籍に影響するわけがない。
そんなわけない、国籍欄に「アメリカ」と書いてあれば、その人はアメリカ合衆国の国民だし、「フランス」と書いてあれば、フランス共和国の国民でしょう、そうじゃなきゃ「国籍」なんて意味ないじゃん、というのが常識だろう。だが、「朝鮮」という記載はその埒外にある。
外国人登録令が施行された1947年、日本国内にいた朝鮮出身者は、まだ日本国籍を保持していたにもかかわらず、この勅令(これが最後の勅令なんだよね、余談だが)の対象とされ、外国人として管理されることになった。そのとき、国籍欄に書かれたのが「朝鮮」という文字である。
当時はまだ、大韓民国も朝鮮民主主義人民共和国も成立していなかった。朝鮮と呼ばれる土地、自分が朝鮮人だと思っている何千万の人々は存在したが「朝鮮」という国家は、どこにも存在していなかったのである。つまり「朝鮮籍」というのは、日本の植民地であった朝鮮の出身、もっと具体的に言えば、朝鮮戸籍登載者という意味しかなかった。
これが、「朝鮮籍」というものの正体である。「北朝鮮籍」などと勘違いしている人もよくみかけるが、朝鮮民主主義人民共和国とは、ぜんぜん関係ない。
まあしかし、勘違いをもたらす事情というのもやはりあるわけで、在日が韓国領事館に行って韓国のパスポートを発給してもらおうとすると、日本の外国人登録の国籍欄を「韓国」と書き換えなければ、正式なパスポートを発給してもらえない。
「朝鮮籍」と外登証に書いてあろうと、韓国の国籍法から見れば大韓民国の国民の要件を満たしているわけで、これは明らかに差別である。自分の国の国民かどうかを見るのに、日本政府のお墨付きをもらわなきゃいけないなんて、植民地根性もいいかげんにしてほしいものだ。