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エレガントな解決法

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「国籍法は違憲」婚外子10人に日本国籍 最高裁判決(朝日)

(2019/06/08追記:新聞記事へのリンクがあったのですが、すでにリンク切れなので、現在残っている下の記事をどうぞ。

婚姻要件の国籍法は違憲、婚外子訴訟で 最高裁 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News 2008/06/05)


ひさびさに胸がすくようなニュースである。原告の方々には、心からおめでとうと申し上げたい。

この子供たちが、帰化申請したら許可が出たかどうかはわからないが、かりに帰化による日本国籍取得が可能だったにしろ、「日本人にしてください」と法務大臣にお願いして、日本国籍をもらうのではなく、権利として、当然に日本国籍を持っているのだ、と認めさせた意義は大きい。

日本に生まれ育ち、日本社会の一員として暮らしていくときに、日本国籍というのは、大きな権利なのである。この子供たちにしろ、母の国の国籍があるからいいじゃないか、というわけにはいかず、居住国の国籍が認められないことが、重大な権利の侵害であるから、このような判決となったわけだ。

判決の意義については、原告の弁護士のブログ(リンク切れ)に、わかりやすくまとまっているので、これを読んでもらった方がいいだろう。

判決そのものは、日本国籍の取得が、基本的人権の保障のために重要であること、現行法の差別的取扱いによって子のこうむる不利益がいちじるしいこと、同じく日本人と親子関係を生じた子であるにもかかわらず非嫡出子についてのみ、父母の婚姻という「子にはどうすることもできない」事情で日本国籍の取得を認めないことは不当であることを正面から認めたものであって、素直によかったと思います。

国籍は参政権と結びついており、参政権とは、自分の属する社会に主体的にコミットするための権利だ。もちろん、基本的人権のひとつでもある。

定住外国人の地方参政権獲得運動に対して、参政権は国籍のある国に求めるべきだ、という意見があるが、かりにわたしたちが韓国で参政権を得たとしても、言葉もわからないし、たまーに旅行で行くか行かないか、祖父母の出身地であるという以外はとくに結びつきのない国なのである。上に書いたような参政権の性質から考えると、基本的人権としての意味はない。

この子供たちの母親は、勝手に日本に来て、日本人男性との間に、結婚をせずに子供をもうけた。不法滞在で強制送還されそうになった人もいる。だがそれは、子供にとっては、なんの責任もないことである。

だいたい人間は勝手に移動するものであるし、そもそも日本国民であったわたしの祖父母が朝鮮から日本に移住してきたことについて、わたしの親やわたしには、なんの責任もない。日本の植民地支配が終わったら、当事者にはなんの断りもなく、意思をたずねられることもなく日本国籍を失い、外国人として日本に住み続けているだけだ。

旧植民地出身者の日本国籍の喪失は、日本の戦後処理の重大な瑕疵だったと思うけど、わたしたち在日自身も、基本的人権の保障のために、権利としての日本国籍をよこせ、という方向には行かなかった。

あるものは大金と莫大な手間をかけて法務大臣にお願いして日本国籍を取得し、ってまだるこしく言っているが、要するに帰化したわけだ。これが、毎年約1万人。

また、8割方が日本人と結婚することにより、生まれた子供は日本国籍となり、次の世代からは国籍問題は解決、である。日本国籍の子供を持った在日の親は、まず帰化しているので、上と重なるが。

そして、少数の意地っ張りたちが、日本国籍を持たないまま、限定的な権利、つまり地方参政権をよこせと訴えている。

国籍法を改正することもなく、60万いた在日がこうして消えていこうとしているわけだ。なんとエレガントな解決方法だろう。

しかし、自国内に住んでいた旧植民地出身者の人権は一顧だにせず、国籍をとりあげてからおもむろにいくつも国籍条項を作って、日本社会から排除し、彼らが自主的に日本に同化するのにまかせた、というのは、戦後日本の大きな汚点だと思うけどね。

アイヌが先住民であることも認められたことだし、われわれ元日本人、つまり旧植民地出身者とその子孫も、権利としての日本国籍を認めよ、民族的アイデンティティを保持するための民族教育を保証せよ、という方向に行ったほうが建設的だし、戦後処理のまずさを埋められるんだから、日本人から見ても、決して悪い話じゃないと思うけど。

まあ、保持すべき民族的アイデンティティなんて、せいぜい家庭料理が韓国風だという程度なんだから、遅きに失したかもしれないね。

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