「最近の若いものは叱られたことがないから、ちょっときつく叱るとすぐ来なくなってしまう」

いままで、ご相談や研修の中などで、このような意味の言葉を何度も聞いています。

建設、運送、医療、介護等、一瞬のミスが命とりになるような業種に、こう考える中高年の方が多いような気がします。
確かに、危険があるときに、とっさに大声で叱ったり、「ばかやろう」などと罵倒することは、しかたないことかもしれません。
でも、その大声、その罵倒、いつも必要でしょうか?

若い人たちも、叱られたことがないというわけではないでしょう。
しかし、大声を出されたり、理不尽に押し付けられたり、人格を否定されるような叱られ方は経験がないのです。
そして、そのように育てられて、とくに問題もなく学校を卒業し、就職してきています。
大声、罵倒、人格否定、理不尽な命令、こういうものを使わなくても、十分指導できるし、かえってそのほうが素直についてきてくれます。

これから就職してくる若い人たちは、人口も現在の40代、50代から考えると、半分になっています。
これからの経営には、人的資源をいかに確保するかが、最大のポイントになります。
人口が多いから雑に扱っていいということはありませんが、ひとりひとりを大切に扱い、その能力を発揮してもらうことが、経営の必須条件なのです。

「甘やかされているから、きつく叱って鍛えてやる」

こんな思考は、百害あって一理なしです。
鍛えてどうするのでしょうか?
人格否定のパワハラを当然と考えるような人材を再生産したいのでしょうか。
若い部下は、上司の支配欲を満足させるためにいるのではありません。

会社の側も、以前であれば、経験を積み、実績のある上司を大事に扱っていました。
しかし、少子高齢化による人材不足をひしひしと感じる現在、若い人をつぶしてしまうような上司は、早めに退場してもらうほうが会社のため、という思考になってきています。

この変化を理解して、部下の指導にあたらないと、その上司個人にも未来がありません。
旧態依然の「鍛えてやる」という考え方の上司を放置している会社にも未来がありません。

上司は、いままで「どなる」「一方的に命令する」「いやみをいう」「罵倒する」などの方法でしか育てられていませんので、今度は自分が指導する側になったら、どのように育てていいかわかりません。
研修によって、上司を育て直すことが必要です。
このことに、気づいた会社が生き残っていくでしょう。