ハラスメント防止研修の中で、怒りをクールダウンさせる方法について、簡単に触れることがあります。
2時間や3時間の研修の中で、ほんの5分程度の内容なのですが、終了後に書いていただくアンケートの中に、この点を「役に立ちそう」と触れている方が多い部分です。
5つの手順を覚えて、この順番でやってみてください。
最初の文字をとって「と・い・な・お・し」と覚えると、すぐに出てきやすくなります。

1.「と」止まる

まずは、行動も思考もやめて、立ち止まります。
万一、こぶしをふりあげそうになっていたりしたら、自分の手を抑えてください。
大声を出しそうになっていたら、開けた口を閉じてください。
その場をはずすのもよい方法です。
怒りの感情は、90秒しか続かないという説もあり、何秒、何分という部分は人それぞれかもしれませんが、まず数分あれば、だれでも落ち着きます。
いったん部屋から外に出れば、2,3分は簡単にかせげますね。
頭の中で数を数える、という方法もあります。

2.「い」息をする

怒っている人、あせっている人を落ち着かせようとして、「はい、深呼吸!」と声をかけるとき、ありますよね。
これは真理です。
人前でいきなり深呼吸をするのは、ちょっと変に思われそう、というときは、自分の呼吸を意識してみるだけでも、ぜんぜん違います。
間違いなく、浅く早い呼吸になっています。
自分の呼吸がせわしないことに気づくだけで、落ち着いた呼吸を取り戻すことができます。

3.「な」名前をつける

なにに名前をつけるのでしょう。
それは、自分の感情です。
自分の状態を、言語化するのです。
「頭にきて、いまにもどなりそうになっている」
「いま自分は怒りで震えている。顔が真っ赤になっているかも」
言語化するということは、第三者的な目で自分の状態を見ることになります。
そうすると、感情に飲み込まれません。

また、言語化ではなく、自分の怒りの度合いを数値化するのもよい方法です。
おだやかな気持ちのときを0とし、怒髪天で爆発している状態を10とします。
いまは数字でいうといくつでしょうか?
この方法でも、自分を客観視することができます。

4.「お」落ち着いて考える

前の3つを実行すると、かなり気持ちが落ち着いてくるはずです。
その後に、相手がなぜ自分を怒らせるような行動をしたのか、相手の立場になって考えてみましょう。
ほんとうに悪意だったのか?
なにか事情があったのではないのか?
かっとしているときにはわからなかったことが、いろいろ出てくるはずです。

5.「し」静かに話す

そこまで考えたら、はじめて、相手に応答します。
そのとき、意識して、静かに、ゆっくり言葉を出してみましょう。
怒りの感情に飲み込まれているときは、早口になり、声も大きくなりますね。
その逆をやるわけです。
人間の感情は、行動から逆に影響を受けるときも多いからです。

いかがでしょうか。
文章にすると長いですが、ここまでくるのに数分です。
眼の前でいきなり黙り込むのは穏当ではない場合は、やはり席をはずして、このステップをふむのがよいでしょう。

参考:『仕事が速く、結果を出し続ける人のマインドフルネス思考』人見ルミ(あさ出版)