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ディズニーリゾート、突然の解雇めぐり従業員が会社を告発、偽装請負と劣悪環境の疑い(1/2) | ビジネスジャーナル

●派遣切りの実態
もう一つの気になる動きは、ショーのリニューアルに伴う派遣切り問題だ。ディズニーランドのレギュラーショーおよびスペシャルイベントに、それぞれ7~17年間にわたりパフォーマーとして①派遣契約で出演してきた出演者たちが、「ショーをリニューアルオープンする」という名目で、②会社側から3月末での解雇を通告された。出演者たちは、「このままでは夢の場がブラック化しかねない」として、オリエンタルランドに直接雇用を求め、オリエンタルランド・ユニオンを結成したのだ。
オリエンタルランド・ユニオンは3月にオリエンタルランドに対し、団体交渉の開催を求めたが、③オリエンタルランド側は、請負業者と請負契約を結んでいる「注文主」にすぎず、雇用契約も指揮命令関係もなければ労務管理にも関与していないので「使用者」ではないという理由で団体交渉を拒否したのだ。(強調、番号は引用者)

うーん、記事を書いた人も、かなり混乱しているようです。

オリエンタルランドほどの規模の会社が、雇用関係の書類を整えていないことは考えられません。おそらく、外形的には③にあるように、どこかの請負会社にショーやイベントを外注していて、パフォーマーたちはその請負会社に雇われている、という形式なのでしょう。

そうなると、②の「会社」というのは、オリエンタルランドではなく、その請負会社、①の「派遣契約」というのは間違い、ということになります。

派遣契約というのは、労働者派遣法にもとづいて結ばれるもので、下の画像のように、雇用主(派遣会社)と指揮命令する派遣先の会社が別々です。

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(厚労省パンフレット『派遣先の皆様へ』PDFより)

このような形の契約は、使用者の責任があいまいになり、労働者の権利がきちんと守られないため、派遣法で通常の労働契約よりもたくさんの縛りをかけた上で特別に認められているのです。

請負契約では、請負会社が雇っている労働者について注文主は責任を負いませんが、派遣契約では、労働基準法や労働安全衛生法上の使用者の義務についても、一部派遣先の責任になることが定められています。

このような責任の発生と解雇の規制を避けるために、形式的には外注(請負)という形で契約し、実際は派遣のように注文主が直接労働者に指揮命令するということがよくあります。これは「偽装請負」と呼ばれ、労働者派遣法違反となります。

派遣契約があれば、派遣先(オリエンタルランド)が労働条件の決定に具体的に関わっている場合には、派遣先にも労働組合法上の使用者として団交に応じる義務があります。ですから、このようなオリエンタルランドの回答が出てくるわけがありません。

(ここで「労働組合法上の使用者」という、ちょっとややこしい概念が出てくるのですが、これを説明しだすと長くなってしまうので、またの機会にゆずります。)

記事の後半部分で、実際にはオリエンタルランドがパフォーマーたちに指揮命令していて、偽装請負で実態は派遣だということを主張しているので、このように書いたのかもしれません。そうであっても、明らかに派遣契約がないところに、そのように書いてしまうのはおかしいですし、「偽装請負だ」という話とも矛盾してしまいます。

派遣か請負か、という問題は、なかなか微妙で一筋縄ではいきません。

そういうグレーの部分を利用して、従業員の請負化をすすめるようなコンサルタントもいますし、本も出ているのですが、わたしはお客様にそれはおすすめしません。

いったんブラック企業の烙印が押されてしまうと、なかなか挽回するのは難しく、その後の採用は困難になり、経営状態にも影響してきます。とくに、夢を売るテーマパークで、キャストの舞台裏はブラックだったということになったら、興ざめですよね。

わたしのお客様である中小企業は、地域の中で生きている存在です。採用を考えるときに、地元の評判というものも無視できません。

友人同士が Line などの SNS でつながっている若者たちの間に、ウワサが広まるのは早いものです。地元の学生たちの間に「あの会社はヤバイ」という話が広まったら、それころ企業としては「ヤバイ」状況です。
甘ちゃん | いろいろ | メンタルサポートろうむ

経営者も勤めている人も同じ町に住んでいることも多く、従業員や外注先の恨みを買うような経営方法は、地域で長く愛される存在になるためには得策ではありません。

倫理やコンプライアンスというと、きれいごとのようですが、会社のリスク管理のために考えなくてはいけないことなのです。