「やっぱりハンサムが有利だよね。
不細工な男がやるのと、ハンサムがやるのとでは、女性の反応が違うもん」
セクシュアル・ハラスメントの話になると、男性がよくおっしゃることのひとつです。
「やる側が『これはセクハラではない』と思っていても、受ける側が『セクハラだ』と思えば、それはセクハラである」
研修などでもこういう教え方をよくしますし、もちろん、間違いではありません。
この考え方は、かなり定着しているようで、たいへんいい傾向だと思います。
でも、ハンサム有利か? となると、専門家としては違う意見があります。
セクハラの定義は、このようなものです。
「労働者の意に反する性的な言動で、その労働者の労働条件について、不利益を受けるもの」(対価型)
「労働者の意に反する性的な言動で、労働者の職場環境が害されるもの」(環境型)
仕事の場で性的な意図を持って異性の体に触る、などの行為は、相手がいやがっていれば、一度でもセクハラとなります。
相手がいやがらなければいいのか?
それならやはりハンサム有利じゃないか。
いえいえ、それはセクハラではないかもしれませんが、たいていの職場の就業規則には、職務に専念しなさいという規定がありますから、服務規程違反になりますよ。
職場では、たとえ相思相愛であっても、プライベートな感情はとりあえず棚上げにするのが、きちんとした社会人というものです。
では、「食事に誘う」などの行為はどうでしょうか。
これも、相手がいやがっていれば「意に反する性的な言動」となります。
相手がいやがるかどうか、という問題ですから、確かにここまではハンサム有利かもしれませんね。
しかし、この程度の行為であれば、相手に拒否されたときに、1度であきらめ、相手が応じなかったからといって、自分の職場での権力を利用して言うことをきかせようなどとしなければ、ふつうセクハラとまでは言いません。
「その日はちょっと行けないんです」
「わかりました」
以上で終わりです。
行きたいけどほんとうに用事があって行けない場合は、
「でも、いついつなら・・・」
「次に、また誘って下さい」
という話になりますので、気が進まないのか、用事なのか、ということには敏感になりたいものです。
このあたりは、ハンサム有利ではなく、相手の気持ちを尊重しようとしているかどうか、ということがポイントになります。
また、ほんとうはイヤなのに、「断ると仕返しされるのではないか」「職場の雰囲気が悪くなるのではないか」と思って、拒否できないということもあります。
相手よりも職場での立場が上の場合は、相手が明確に拒否しなくても、あとから「セクハラを受けました」と申し立ててくることがあります。
男女がいっしょにいれば、恋愛感情が起こってくることまではとめられませんが、とくに、自分の職場での立場を利用している、と誤解されそうな場合は、慎重にふるまうにこしたことはありません。
別の例で、「ちょっと肩をたたいただけなのに、『セクハラだ』と言われた」というのはどうでしょうか。
受けた側がいやがったらセクハラ、ということだけを考えると、相手次第でどうにでもなってしまうということになりますが、実際はそうではありません。
社会通念、つまり、世間一般の判断基準も重要になってきます。
「わたしがイヤだからイヤ」という、常識からあまりにはずれた訴えは、認められません。
しかし、相手がとくに体の接触に敏感なのを知っているのにそのような行為を繰り返し、セクハラが認定されたという裁判例もあります。
やはり、ここでも、相手の気持ちや考え方を尊重するかどうか、というのがポイントですね。