アサーションというコミュニケーション・スキルがあります。
抽象的ではありますが、「相手も自分も大切にする、自己表現のしかた」と説明しています。

セミナーなどでアサーションの解説をするとき、必ずいうことがあります。

「これは、相手を思い通りにする技術ではありません」

そういう魔法があればいいなーとわたしも思う時がありますが、残念ながらコミュニケーションは相互作用ですので、相手の意志を無視して、自分の思い通りにすることはできません。

たとえば、こちらが上司で部下に対して業務命令を出した場合であっても、命令すれば相手はロボットのように、それを実行するというわけにはいきません。
伝え方の問題もありますし、命令を発した上司を部下が信頼しているか、ということも、業務に影響してきます。

また、コミュニケーションの問題以外にも様々な要素があるでしょう。

そういうときに、単純に「言うとおりにしない部下が悪い」と思っていませんか?

パワー・ハラスメントを起こしやすいタイプの人の特徴のひとつとして「相手を支配し、思い通りにしないと気が済まないタイプ」があります。

職務上の上下関係はあったとしても、人間は本来対等である、という考え方が納得できず、すべての人間関係を「上か下か」「勝つか負けるか」という構図でとらえてしまうタイプです。

もちろん、このタイプが仕事上有能であることも多く、この考え方自体は、良いも悪いもありません。
こういうタイプは、親分肌、姉御肌で、頼りになる場合も多いですね。

ただ、
「わたしの言うとおりにしさえすればうまくいくのに」
「あなたのことを思って言っているのに、どうして言うとおりにしないのか」
「わたしより立場が下なのに、わたしに意見するなんて生意気だ」
という気持ちによくなるという方は、ハラスメントの加害者にならないように、気をつける必要があります。

他人は思い通りになりません。
自分でさえも思い通りにならないのに・・・・

人間関係で、100%どちらがよい、悪いということは、めったにありません。

ほかの人のやっていることを見ているとイラつく、という場合は、相手を過剰にコントロールしようとしていないか、ときどき自分の心を点検してみましょう。