発売から少し時間が経ちましたが、昨年発刊した小冊子「改正派遣法対応!非正規社員の雇用管理」に関するセミナーのご依頼を、ちょくちょくいただいています。

つい先日も、上野法人会様でこのテーマでお話をしてきました。

内容は大まかに言うと、この4点です。

1.派遣社員活用の留意点
2.有期契約社員活用の留意点
3.パートタイマー活用の留意点
4.外国人雇用の留意点

これを見て、なにか違和感を感じないでしょうか?
実は、内容の中に、直接には「非正規社員」と関係ないものが入っています。

それは「外国人雇用」についてです。

外国人を雇用する場合、正社員として雇い入れる、パートタイマーや有期契約労働者として雇い入れる、両方の場合がありますね。
ですから、このテーマにはそぐわないような気もするのですが、「多様な社員に対する雇用管理」というテーマとして考えるとそんなに間違っているわけでもありません。

と、ここまでが少し長い前置きです。

外国人雇用というと、必ず触れる点があります。
それは、公共職業安定所に対する届出です。

雇い入れた外国人が雇用保険に加入する場合は、被保険者資格取得届を利用して、また、留学生など雇用保険の被保険者にならない人については、外国人雇用状況届出書という書式に記入して、ハローワークに届出をします。
届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。


(上の画像は、「在留管理制度の施行に伴う外国人雇用状況の届出パンフレット」より)

この届出については、毎年職業安定局から届出状況が発表されています。
最新の平成28年10月現在のものを見ると、このように出ています。

【届出状況のポイント】
○外国人労働者数は1,083,769人で、前年同期比175,873人、19.4%の増加(平成19年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新)
○外国人労働者を雇用する事業所数は172,798か所で、前年同期比20,537か所、13.5%の増加(平成19年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新)
○国籍別では、中国が最も多く344,658人(外国人労働者全体の31.8%)。次いでベトナム172,018人(同15.9%)、フィリピン127,518人(同11.8%)の順。
対前年伸び率は、ベトナム(56.4%)、ネパール(35.1%)が高い。
○在留資格別では、「専門的・技術的分野」の労働者が200,994人で、前年同期比33,693人、20.1%の増加。また、永住者や永住者を配偶者に持つ人など「身分に基づく在留資格」は413,389人で、前年同期比46,178人、12.6%の増加

外国人労働者数は、届出ベースで、すでに100万人を超えているのですね。

国籍を見ると、多いのは、中国、ベトナム、フィリピン、ブラジル、ネパールの順です。

ここで、もうひとつの違和感が・・・・

そうです、韓国が抜けていますね。
日本に在留している外国人のうち、国籍順に多いのは、中国、韓国、フィリピン、ブラジル、ベトナム、ネパールです。

実はこれにははっきりした理由があります。
特別永住者は、外国人雇用の届出の対象になっていないからです。

特別永住者というのは、ごくざっくり言うと、戦前日本の植民地だった朝鮮、台湾出身の人たちで、日本の領土内での移動として、パスポートを持たずに日本に入国してきた人たち、そしてその子孫のことです。
日本に上陸してきたときには、日本国籍だった人たちです。
人たち、と他人事のように言っていますが、わたしもそのひとりです。

日本国内の韓国人を在留資格で分類すると、いちばん多いのがこの特別永住者(朝鮮籍含めて)ですので、そこを抜いてしまうと、ベスト5にも入らないということになります。

特別永住者の一世はとっくに現役の年齢ではなく、いま働いている人たちは、多くは三世以降で、日本語ネイティブですので、見た目ではまずわかりません。
また、日本名を使って生活している人が多く、雇い入れる際に外国人だと気づかないということもあります。

なお、特別永住者に限らず、下のような場合は届出しなくても罪に問われることはありませんので、ご心配なく。

Q1 雇入れの際、氏名や言語などから、外国人であるとは判断できず、在留資格等の確認・届出をしなかった場合、どうなりますか?
A1 在留資格等の確認は、雇い入れようとする方について、通常の注意力をもって、その方が外国人であると判断できる場合に行ってください。氏名や言語などから、その方が外国人であることが一般的に明らかでないケースであれば、確認・届出をしなかったからといって、法違反を問われることにはなりません。
(「外国人雇用状況届出 Q&A」(PDF)より)