hateposter2

ヘイトスピーチという言葉をご存知でしょうか。

今年6月にヘイトスピーチ解消のための新しい法律ができました。

この黄色いポスターを見たことのある人もいるかもしれません。

法務省では、この法律の制定と同時に、左のポスターや、インターネットサイトなどで、啓発活動を行っています。

近年,特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的関心を集めています。こうした言動は,人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく,人としての尊厳を傷つけたり,差別意識を生じさせることになりかねません。  近時,このヘイトスピーチが,マスメディアやインターネット等で大きく報道されるなど,更に社会的な関心が高まっている上,平成26年7月の国連自由権規約委員会による日本政府報告審査における最終見解【PDF】※及び同年8月の国連人種差別撤廃委員会による同審査における最終見解【PDF】※で,政府に対してヘイトスピーチへの対処が勧告されています。  また,このような情勢の中,国会において,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が成立し,平成28年6月3日(金)に施行されました。
ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動(法務省)

このヘイトスピーチ対策法自体は、禁止や罰則のない理念法で、ヘイトスピーチをしたからといって、刑事罰を課されることはありません。

mainichi

しかし、左の記事を見ていただくとわかるように、はじめてインターネット上のヘイトスピーチに対して、不法行為として損害賠償を認めた判決が出たのも、このような法律ができるという流れと無関係ではないでしょう。
(記事の画像をクリックすると、記事全文が読めます)

では、もしあなたの会社の社員が、Twitter やブログなどにヘイトスピーチを書込み、被害者から訴えられて裁判で不法行為が認定された場合、どのように対応すればよいでしょうか。

社員がどのような思想を持っていようと、それが「在日韓国人や中国人は日本から出て行け」という過激なものであったとしても、あくまでも私生活上のことであり、業務に影響がない以上、会社がどうこう言うことはできません。

思想だけではなく、私生活上の非行、たとえば、酒酔い運転で死亡事故を起こしたり、窃盗や傷害などで有罪判決を受けたり、ということがあっても、基本的には会社はその社員を罰することはできません。

就業規則に、「刑事裁判で有罪判決を受けた場合」というのを懲戒事由に入れている会社もあるでしょう。
とはいっても、もしそのような理由で懲戒処分を行うと、私生活の非行であり、業務に影響があまりない場合、懲戒処分の有効性について裁判で争われると、会社が負ける可能性が高くなります。
社員に対する常識的な心得として、そのような懲戒事由を定めておくことも悪くありませんが、実際に発動するとなると、慎重に行う必要があります。

しかしながら、会社の名前が公になってしまい、そのような社員を雇っているということで、会社のサイトなどが「炎上」した場合はどうでしょうか。

抗議の電話やメールが山のように届き業務が混乱する。
得意先から取引停止の通告が来る。
そのような場合はもちろん、具体的な業務への差し障りがなくても、会社の対外的なイメージが悪化したと客観的に認められる場合、私生活上の非行であっても、就業規則の懲戒規定に根拠があれば、懲戒できるというのが判例の大勢です。

また、最近では、業務の一環として、Facebook や Twitter などの SNS、ブログなどに社員に書込をさせ、会社のPRを行うこともよく見受けられます。
そして、業務に関連する記事だけでなく、私生活上のことも同じアカウントで書き込んでいるというのも、よくある光景です。
このように会社の名前を背負ってインターネットを使っている場合は、さらに注意が必要です。
ネットのことはよくわからないから、得意な社員に任せきり、ということではなく、会社のイメージを損なうような不適切な書込みがないかどうか、常日頃確認しておくべきです。

どこの社員であるか、本名も身元も明らかにして、ヘイトスピーチを行うわけがない、と思う人もいるかもしれません。
しかし、客観的に見てヘイトスピーチと言わざるをえないような民族的な罵倒であっても、当の本人は、日本をよくするために正しいことだと思ってやっているのですから、十分に起こりうることだと考えておいたほうがよいでしょう。

就業規則の規定、社員への教育方法など、疑問な点があれば、お気軽にお問合せ下さい。

 

オンラインセミナー「小規模事業所・個人事業主のための 初めてのSNS活用法」にて、炎上しないための注意点、炎上してしまったときの対策について、くわしくお話します。
オンラインですので、全国どこからでもご参加いただけます。
くわしい情報・お申込みはこちらからどうぞ。
(2019/09/19追記)