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不幸にも自殺してしまった方は、その7割以上が、実行する前になんらかのサインを出していた、という調査があります。
具体的に、どのようなサインなのかははっきりわかりませんが、「死にたい」ともらす、ということは、その中でもはっきりした兆候です。
そのようなサインに気づいていたのに「まさか本気じゃないよね。だって、死にたいって言う人はほんとに死なないっていうじゃない」と、軽くとらえていて、一生の悔いを残す、というのは、実際にあることなのです。
第86号 危険な迷信 | メルマガ | メンタルサポートろうむ

以前、上のように書いたことがあります。また、メンタルヘルスの研修・セミナーをやるときは、必ずこのことをお話しています。

しかし、また、やりきれないニュースに触れることになってしまいました。

両親が同級生などから聞いた話では、松竹君は昨年11月からラインで「死ぬ前にやることが3つ」などと記述し、自殺前日には「死ぬ準備はできている」、当日の午前4時過ぎには同級生に「さようなら」などと送っていた。
松竹君は携帯音楽端末でラインを利用。複数の同級生が自殺をやめるようメッセージを送っていたが、松竹君の両親や学校には知らせていなかった。一部の同級生は保護者のスマートフォンでラインを利用しており、自殺を巡るやり取りを見ていた保護者もいたが、やはり松竹君の両親や学校に知らせなかった。
<SOS>中3自殺 LINEに「死ぬ準備」「さようなら」 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース

このニュースでは、同級生はちゃんと自殺を止めるメッセージを送っています。でも、それでは思いとどまらせることはできなかったのです。

親御さんや学校に知らなければならなかったことはもちろんです。でも、知らせを聞いたほうも、「死んではいけない」「自殺などしたら周りの人がどれだけ悲しむか」と諭して終わり、というのでは、やはり不十分なのです。

それで本人が思いとどまることもあるでしょうから、自殺をやめるよう話すことが悪いわけではありません。

しかし、思いとどまるよう説得する言葉というのは、考えようによっては本人の苦しみを増すことになります。

「死んではいけない」→「いまのつらさを抱えて生きていけ」

「自殺などしたら周りの人がどれだけ悲しむか」→「周りの人を悲しませないため、つまり、周りの都合のために、おまえはいまの苦しみを耐え忍ばなければならない」

「死にたい」というのは「生きたい。でも、生きるのがつらすぎる」という意味なのです。そのつらさを受け止め、本人の苦しみを解消するためになんでもする、という決意と行動を見せる必要があります。

具体的には、まず学校を休ませ「休んでもいい、逃げてもいい」と伝えること。親は仕事を休んででも子供につきそい、学校と話し合わなければなりません。

でも、ほんとに死ぬって口癖みたいにいう人もいるよね? そういうのも、いちいち緊急対応なの? と思う人もいるでしょう。

軽く言っているだけなのか、ほんとうに実行する前のサインなのかは、正直いって、ふだんのようすを見ていないと判断するのは難しいと思います。

今回の事件では、友だちの親御さんも知っていたのに知らせなかった、と出ていますが、これはちょっと責めるのは酷かもしれません。それに、中学生くらいの子供は、なかなかラインの中での発言を親や先生にいいたがらないでしょう。SOSを出していたのに、出すところを間違っていて、自分のことをよく見ていて、自分のために行動してくれる人のところに届かなかったのです。ほんとうに悲しいことです。

メンタルヘルスの研修では、メンタル不調や、自殺のサインを見落とさないためには、日頃のようすをよく見ておくこと、というお話をしますが、まさにそういうことなのです。

そしてもうひとつ、周りに大騒ぎしてほしいだけで、ほんとは死ぬ気なんてない人もいるでしょう? という意見もあるかもしれません。

それならば、「周りに大騒ぎしてほしい」という気持ちは見過ごしてよいのでしょうか? それはわがままではなく、「わたしを見て」「わたしを愛して」という叫びなのです。

もちろん、親御さんやご家族は十分に愛情をもっている場合が大半だと思います。でも、それが本人には伝わってないわけですから、伝える努力が必要です。

何度でもくりかえしますが、「死にたい」など、自殺をほのめかす言葉、そして、身辺整理をしていることに気づいたら、最大の緊急事態です。親として、家族として、学校として、職場の仲間として、これ以上必死にならなければならないときはありません。

そして、本人の話をよく聴いてつらい気持ちによりそう、言葉とともに行動でたいせつに思っていること、いつも味方でいることを伝える、ということを忘れないで下さい。