きのうに引き続いて、『アナと雪の女王』から読み取れる、登場人物の心理を見てみましょう。

プリンセスもののお伽話とはいえ、このあたりはきちんと作られています。ですから、子供だけではなく大人の共感も呼ぶのでしょう。

さて、魔法を使えることを隠すため、姉が自室に閉じこもってしまった後、妹は、何度もドア越しに、「雪遊びしよう」と呼びかけます。体は成長していき、幼い子供から思春期の少女になりますが、歌っている歌は同じ。

ドアのむこうの姉のようすは描かれませんが、容易に想像することはできます。

事故とはいえ、自分の魔法で妹の命を危うくしたことへの恐怖や罪悪感でいっぱいのところに、事情を知らない妹は、何度も「遊ぼう」と呼びかけてくる。でも、それに応えられない寂しさ、もどかしさを、ドアの反対側で感じ続けていたに違いありません。そのような状況が長年続くと、妹を愛しく、ふびんに思う一方で、しつこく呼びかけて自分を苦しめ続ける妹に、怒りの気持ちがじょじょにわいてきたとは考えられないでしょうか。

妹にはなにも責任はない。でも、彼女は城の中だけとはいえ、自由にふるまっている。自分は自室から出られず、人前に出ることはできない。妹はふつうの人間なのに、なぜ自分だけがこんな力を授かってしまったのだろう。うらやましさが、嫉妬に変わっても不思議はない状況です。

そして、戴冠式の日。

ひさしぶりに顔を合わせた妹に、ぎこちないながら話しかけても、妹はすぐにパーティーに夢中になり、姉をおいてけぼりにしてしまいます。

もっと妹と話したい。いつ戻ってくるのかと待っていたところに、妹はきょう会ったばかりの他国の王子を連れて現れ、「結婚します」と宣言します。

妹が恋に恋するように、姉もまた年頃の女性です。しかし、女王として、気楽に男性に夢中になるわけにもいかない。そしてなにより、魔法の力を隠すためには、だれかと親密になるわけにはいかない。恋にあこがれていながら、あきらめていたでしょう。

妹が唯一の肉親である自分よりも、恋の相手を選んだ寂しさ。自分には叶えられないものを妹はすべて持っているといううらやましさ。

姉が怒り、魔力を隠す自制心を失ってしまった背景には、怒り以外のこんな感情があったことが想像できます。

そして、姉の怒りから、王国は雪と氷に閉ざされてしまいます。

怒りの感情は、とても強く、破壊的なものです。

その背後には、ほんとうは自分もこうしたい、でもできない、もっとだれかと仲良くしたい、でも振り向いてくれない、このような葛藤が隠されていることも多いのです。

自分がほんとうに何を望んでいるのか気づいたとき、あんなに強烈だった怒りの感情も色あせていきます。

なにかに腹が立ってしかたがないとき、ほんとうは自分はどうしたいのか。なにかかなえられないと思い込んでいる欲求があるのではないのか。このように自分に問いかけてみることも、怒りの感情をコントロールするための、ひとつの方法になるのです。

怒りは人間の自然な感情であり、怒ること自体はいいことでも悪いことでもありません。ただ、怒りのために、人間関係を破壊したり、仕事に悪影響がないように、コントロールすることが必要です。

怒りのコントロールはパワハラの予防にも効果的です。メンタルサポートろうむでは、研修プログラムを用意しておりますので、興味のある方は、ぜひお問い合わせください。