映画『グリーンブック』公式サイト

劇場で見るかどうか迷っていたが、けっきょく最終日に滑り込み。
結論としては、劇場のよい音響で見られたのはよかった。
音楽映画としては。

なにかと批判もあり、マイノリティ当事者が見ると、なんかもやっとするという話も複数の友人から聞いていたが、そのわけがわかった。

つまりこういうことだ。

I have black friends.

これって、レイシストの言い訳の常套句だ。
この映画は、これをハートウォーミングコメディとか、楽しいロードムービーとか、そういうものに仕立てたわけ。

白人は、つねに選択する側にいて、自分はなにも脅かされない。
主人公のトニーは一見黒人差別をやめたように見えるけど、黒人の友達ができただけだ。差別意識を持ったまま、その対象と友達になることはできるし、いくらでもある話だ。
考えを改めて、差別自体をやめたことを示すシーンもどこにもない。

もちろん、この映画を見て、当時の黒人のおかれたひどい状況に憤りを感じたり、ドン・シャーリーのつらい心境に共感したりする人もたくさんいるだろう。
まあそれはそれでいいんだけど、悲しい状況を、物語として消費してるだけ、とも言える。

で、映画自体がつまらなかったら、上のような批判をして終わりなんだけども、幸か不幸か、映画としては実によくできてる。

脚本も演技もいいし、なにより音楽がいい。

ちょっとクラシック寄りのジャズ。
そのジャンル自体が、黒人コミュニティから離れたところで育った、シャーリーのアイデンティティを示しているようだ。

娯楽作品としては上出来だが、なにも突き刺さるものがないぬるい映画。
だからこそ、マジョリティも安心して見ていられて、ヒットしたんだろうな。

劇中、イタリア系のアメリカ人たちが、英語話者に聞かれたくない話をするときは、イタリア語に切り替えてしゃべりだすシーンが何箇所も出てくる。
1960年代は、まだこういう感じだったのかなぁ。
いまは、イタリア系だからといって、イタリア語しゃべれないよね?

1960年ごろというと、在日一世のわたしの祖父母は40代そこそこで、ふだんは主に日本語を使って暮らしていたが、この映画に出てくるイタリア移民のように、そのときの都合に応じて朝鮮語を使っていた。
なにかというと、近所に住む一族郎党集まって食事をしたり、小さい頃に見たような風景だった。
貧乏と無学というのが、イタリア移民のステレオタイプだったんだけど、そのあたりもいかにもありそうな感じに描かれている。
移民社会を描いた映画は、いつも興味深い。


メモ

邦題 グリーンブック
原題 GREEN BOOK
監督 ピーター・ファレリー
俳優 ヴィゴ・モーテンセン(トニー・リップ)
マハーシャラ・アリ(ドクター・シャーリー)
リンダ・カーデリーニ(ドロレス・バレロンガ)
関連書籍
劇場/媒体 TOHOシネマズ宇都宮
製作国 アメリカ
観た日 2019/04/25