しょうもない邦題が変更になったことが話題だが、1)「ドリーム 私たちのアポロ計画」邦題変更 「ドリーム」に – ITmedia ビジネスオンライン、これもまた、意味わかんない邦題。
ラビングってこの夫婦の姓であって、異人種間結婚禁止法を撤廃させた有名な訴訟が「ラビング対バージニア(州)訴訟」と呼ばれている。
たとえば、日本で青山さんという人が訴訟を起こして「青山訴訟」と呼ばれていたとしたら、「青い山のなんちゃら」みたいなタイトルになるか?

映画は、お涙頂戴路線とか、政治的アジ路線を意識的に避けたと思われるが、抑えた語り口でじゅうぶんだ。

異人種間結婚禁止なんてものが、いかに人権無視で差別的なひどいものかは、現代に生きているわたしたちにはわかりすぎるほどわかる。
当時、黒人と白人の結婚が不道徳なものとして扱われていて、そのためにいろいろ理由をくっつけているようす(とくに、「自然の摂理に反する」とか)を見ると、同性婚を望むセクシュアルマイノリティをたたきつぶそうとする論理とまったく相似形なのにげんなりする。

2)画像出典:映画『ラビング 愛という名前のふたり』公式サイト
ジョエル・エドガートンが、無骨で無口な心優しい夫リチャードを好演。
ほんと、このクマさんが妻一筋なのに泣ける。

ミルドレッド(ルース・ネッガ)は、たぶん夫より頭もよく、気が強く弁が立つ女性。
リチャードが「尻に敷かれてるよ」と述懐するシーンがあるが、実際のところ、だいじな決定は妻の希望がほとんど通っている。
だが、連邦裁判所の判決の日に出廷するかどうかだけは、リチャードが自分の意思を通す。
「夫に従います」と言いながら、口元に明らかに不服~と書いてあるミルドレッドの表情がよかった。
自分は出たいと思っていたが、この裁判があまりにマスコミベースになってしまうことを、夫が快く思ってないのを知っていたから、譲ったのだろう。

この映画を見ていると「わざわざ逮捕されるようなところに帰ってこなくても」「田舎がいいなら、自分の生まれ故郷じゃなくても、他に行けばいいんじゃないの?」という「迂回路」が頭をよぎる。
実際のところ、白人同士、黒人同士の夫婦と同じような生活を送ることもできただろう。「故郷で暮らしたい」という彼らの希望さえあきらめれば。
でも、ほかの人達が堂々と歩ける道を自分たちだけは通れず、なぜ遠回りして苦労しなければならないのか、その答はぜったいに出ない。

ちょっと迂回したほうがラクだよ、という考えは、周囲からだけじゃなくて、身内からも言われるし、自分自身も迷う。
でもそこで、まっすぐこの道を歩きたい! という希望を失わなかった人たちが闘ったことによって、いまのこの社会はある。

法廷で戦うことは、世間とも戦うことを意味する。
この映画では、そのあたりは、リチャードの車に、彼らの載った雑誌記事をくるんだレンガが置かれていた、とか、かなりソフトな描写だけど、正直、ほんとかいな、という感じ。

こういう証言もある。

38年前に黒人女性と結婚したアメリカン大学(American University)のゲリー・ウィーバー(Gary Weaver)教授は、「自宅には卵が投げつけられ、車にはライフルの弾が9発撃ち込まれ、芝生には火をつけられたものです」と語った。「1970年代初め、白人と黒人との結婚は非常にまれでした」

(米国の「異人種間結婚禁止法」撤廃の立役者、ラビングさんが死去 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)



メモ

邦題 ラビング 愛という名前のふたり
原題 LOVING
監督 ジェフ・ニコルズ
俳優 リチャード: ジョエル・エドガートン
ミルドレッド: ルース・ネッガ
ブルックス保安官: マートン・ソーカス
バーナード・コーエン: ニック・クロール
ガーネット: テリー・アブニー
関連書籍
劇場/媒体 宇都宮ヒカリ座
だれと
観た日 2017/06/09

Footnotes   [ + ]