1)画像出典:映画『マグニフィセント・セブン』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ
わたしの周りではいい評判ばかりだったのだが、劇場で見逃してしまい、やっと見ることができた。

確かにおもしろい。
そして、リメイクだけど、きちんと2016年の映画になっている。
『七人の侍』も『荒野の七人』も見ていないので、元ネタと比べることはできないが、ハリウッド映画の現在の潮流を踏まえた映画だということはわかる。

まず、女性の扱い。
町を守るために7人を雇うエマ(ヘイリー・ベネット)。
冒頭、協会の中で夫の隣に座っているときと、夫の死後、助っ人を頼むために男に混じって馬に乗り、自分も戦闘に加わろうと奮闘するときとでは、顔つきがまったく違う。
腹をくくった女性の強さをはっきり見せている。

でも、相変わらずスカートをはき、乗馬は横乗り、腕や肩、胸の上部を露出した女性らしい服装である点が、ちぐはぐだ。
訓練の途中で「ズボンをはけ」とか言われてるし。
男性がベストやジャケットを着ているのに、女性は肌がむきだし。
全編を覆うもうもうたる土埃、日差しが強く乾燥した気候の中で、とうてい快適とは言い難い服装だが、19世紀のアメリカの女性はそれしか着るものなかったんだろうというのもわかる。

リーダーが黒人で、メキシカン、中国系2)演じているイ・ビョンホンは韓国人だが、時代背景から見て、クーリーと呼ばれた中国系移民だろう。そこをごまかすためか、セリフはすべて英語。、ネイティブアメリカンと、エスニックマイノリティを揃えているのも、近年のハリウッド映画らしいキャスティングだ。

彼らは個人でもあるし、それぞれの背負っている背景の代表者でもある。

サム(デンゼル・ワシントン)と、グッドナイト・ロビショー(イーサン・ホーク)の友情を通して北軍と南軍の、そして黒人と白人の和解が描かれる。

南北戦争には言及されているが、それより数十年前のテキサス独立戦争に関しては、とくに話題にのぼらない。
だが、ジョシュ(クリス・プラット)とメキシコ人であるバスケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)の角突き合いを見ると、当然わだかまりは残っていることがわかる。
このふたりも、決戦を前にそれどころじゃなくなり、協力関係ができていく感じ。

そして、、「インディアン」をさんざん殺してきたジャック・ホーン(ヴィンセント・ドノフリオ)。
初登場のシーンでは、ビーバーの毛皮でできた帽子をかぶっている。開拓時代の英雄であるデイビー・クロケット、つまり「インディアン討伐」のイメージだ。
狂信的と言いたくなるほど信心深いのも、キリスト教徒が異教徒である先住民を虐殺した西部開拓の歴史を思い起こさせる。
決戦の前の晩、レッドハーベスト(マーティン・センズメアー)3)実際にアラスカ先住民の出身だそうだ。が実は英語が話せるのを知ったジャックが、喜々として「たくさん話したいことがある」というシーンが印象的だ。

とにかくアクションはかっこいいし、7人はそれぞれ魅力的だし、とくに文句はないのだが、唯一、彼らがなぜ葛藤も見せずに死地に赴くのか、という点はほとんど説明されていない。

最後のボーグ(ピーター・サースガード)との対決で、サムだけは個人的な恨みがあったということがわかるんだけど、それ以外の6人は、なんとなく流れで合流しているような感じで、際立った動機がない。

かわりに描かれるのは、彼らの強さなのだが、強い、ということは、いままでさんざん人を殺してきたということだ。
生き残るためとはいえ、そんな生き方に倦んでいた、というのは考えられる。
もっとも、映画の中では、いままでの生き方についての内省とか、そんなシーンはまったくないが。

でも、最後は人の役に立つことをして、罪多い人生を終わりにしたい、という消極的な自殺願望みたいなもの、浄化への憧れもちらっと感じるんだよね。
先に書いた、和解について思い起こすとなおさら。
戦闘で死んでいく彼らが、とても安らかに、満足した表情で倒れているのを見ても。

そして、ボーグを倒したサムが、「赦しを請え」と強要するのも、そういう文脈のつながりを感じる。
恨みを晴らすというのは、相手を残酷に殺すことではなく、悔い改めさせること。
罪多いといえば、ボーグが登場人物の中でダントツなわけで、それまで復讐とか、生き残りをかけた戦いだったのに、唐突に「赦し」が出て来るというのも、死を前にした人生の浄化が、この映画のひとつのテーマになっているようにも見える。

まあ、理屈はともかく、それまで、似たリズムの音楽が流れていて、頭のなかに『荒野の七人』のテーマが再生されていたところに、まさにぴたっとはまる、最後の演出が最高。
それぞれ決め顔が出て来るが、とくにイ・ビョンホンかっちょいい!
マーティン・センズメアーも初めて見たが、精悍でめっちゃいけてます。



メモ

邦題 マグニフィセント・セブン
原題 THE MAGNIFICENT SEVEN
監督 アントワーン・フークア
俳優 サム・チザム: デンゼル・ワシントン
ジョシュ・ファラデー: クリス・プラット
グッドナイト・ロビショー: イーサン・ホーク
ジャック・ホーン: ヴィンセント・ドノフリオ
ビリー・ロックス: イ・ビョンホン
バスケス: マヌエル・ガルシア=ルルフォ
レッドハーベスト: マーティン・センズメアー
エマ・クレン: ヘイリー・ベネット
バーソロミュー・ボーグ: ピーター・サースガード
原作 七人の侍
荒野の七人
劇場/媒体 Amazon ビデオ(レンタル)
だれと
観た日 2017/05/26

Footnotes   [ + ]

1. 画像出典:映画『マグニフィセント・セブン』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ
2. 演じているイ・ビョンホンは韓国人だが、時代背景から見て、クーリーと呼ばれた中国系移民だろう。そこをごまかすためか、セリフはすべて英語。
3. 実際にアラスカ先住民の出身だそうだ。