わたしにとっては、この映画のおもしろさって、あ、こう来るな、と思わせておいて、ちょっとずらす、はずす、というのを積み重ねていくところだった。コメディの常套手段なのだが、見てるとだんだんそのずれ具合がつぼにはまってくるというか。

ペ・ドゥナが親身になって面倒を見たおばあさんが亡くなり、病院の人が遺書めいた封筒を持ってくる。これは隠し財産でもあって、それを残してくれたのか、なんてスクリーンのあっちでもこっちでもつい期待するのだが、出てきたのは「切干大根をよろしく」。実はわたしは、ここに来るまで、犬をなくしてがっくりしたおばあさんと、最初のほうに屋上でイ・ソンジェに話しかける切干大根のおばあさんが同一人物だと気づいてなかったので、よけいにうけてしまった。

酔っ払ったイ・ソンジェが地下鉄のホームでげろげろになっていて、ホームから顔を突き出しているところに列車が! っていうのは、最初のほうにまったく同じパターンで亡くなった人がいた、という話が出てくるのだけど、え? 主人公はまた死なないよね、と思っていると、次の画面で泥酔して寝転がっている男をペ・ドゥナが介抱すると、これがイ・ソンジェ。

まあこうやって文字にするとあまりおもしろくないし、ひとつひとつならどってことないのだけど、全編この調子でたたみかけられると、最後のほうはついへらへらしながら、おー、こう来たかー、みたいに次はどんなふうにずらしてくるのか、っていうのを楽しみに見ていた。

登場人物もみんな少しずれていて、一番わかりやすいのは、犬鍋を趣味にしてる警備員のおじさんだろう。いくら犬を食べる習慣があるとはいえ、食用犬というのは種類が決まっているそうで、そんへんをちょろちょろしている愛玩犬などは、ふつう食べない。また「補身湯(ポシンタン)」という名がついていることからもわかるように、おいしいから食べる、というより、滋養強壮とか、昔の農村では、脚気に対する薬効を期待して食べるものだったそうだ。っていうのは、祖母に聞いた話。

そういえば、「サンドゥ、学校へ行こう」でも、ピに心を移したコン・ヒョジンが、婚約者であるイ・ドンゴンが自分からふってくれるようにわざと嫌われるような行動をとるシーンで「犬を食べに行こう!」と言い出す、というのがある。若い女性が「犬食べたい」などというのは、彼氏にあきれられる行動なのである。で、実際に料理店に行って食べるのだが、ペットの犬をいつもかわいがっているコン・ヒョジンは、やはりどうしても食べられず、トイレで吐いてしまう。

ということで、あの警備員のおじさんの犬鍋は、韓国人から見ても、そうとうブラックだというのは想像できると思う。そのへんの事情を知らずに、あれがふつうだと思うと、だいぶ話が違ってきてしまう。

教授のポストが賄賂で決まるという話が、この映画のもうひとつの大きなエピソードなのだが、あまりに身もふたもなくて笑える。菓子折りじゃなくてケーキの箱。現代的?



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メモ

邦題 ほえる犬は噛まない
原題 플란다스의 개
監督 ポン・ジュノ
俳優 イ・ソンジェ
ペ・ドゥナ
ピョン・ヒボン
コ・スヒ
関連書籍
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だれと
観た日 2004/11/26